生まれ変わり

 今日は成績発表の日だった.ティッシュに並べられた精液みたいな多いBの文字を眺めた自分は,詳細な点数を知るために調査願を出した.

 

 思えば,この一年でさまざまな面倒くさいことをできるようになったと思う.7枚も書いた調査願もそのうちのひとつで,ほかにもっと無数の,思い出せないほどの面倒を熟してきたんだと思う.

一年と半年ほど前に出した二枚の調査願はユニットバスの洗面台で燃やした.

 

 そうして冬が明けて,陰鬱な春が始まった.

街をふらつく自分が煙草;アメリカンスピリット を拾わなければ,おそらく川に打ち上げられていたと思う.

 

 煙草のタール量が落ち着きだすころ,雨雲がやってきた.バルコニーに染みをつけては消えていき,あの街に隙間々々の蒼を見せる雨雲が.

でもその時は,自分の心に蒼は映らなかった.代わりに雨の後の室外機みたく黒くざらついた内心があるだけだった.パソコンの画面にはソーシャルゲームのキャラクターが走っていたし,もうアルバイトまでそんなに時間はなかった.

 

 皮肉なほど美しい夏が終わるころ,電話が入った.部屋を捨てないかという内容を,心配するように,気持ち悪いほどの声で伝える電話だった.そのころは喪うことに何も抵抗がなかった自分は,その気持ち悪い心配の声に同意した.かくして自分は半年後にあの一室を希求することになる.要は,逸失したのである.

秋が冬に変わり,また春が始まった.軋む足を杖に,鞄にかかる重力をザイルにして歩いていると,その透徹を愛してくれる人ができた.

 

 今,思うことがある.内臓を痛めつけて得た成績.巡礼とそれを愛してくれた人.あの部屋を捨てていなかったら,大切な人はいなかったのだろうか.生まれ変わりって,あるのだろうかね?